昔はモノクロでしか写真が撮れませんでしたが、今は簡単に発色のよいカラー写真が撮れるようになりました。
それなのに、あえてモノクロに加工する(またはモノクロで撮る)人がいます。
プロでもモノクロしか撮らないというこだわりの人もいます。
そんなモノクロ写真の魅力とは何なのでしょうか。
この記事の目次
モノクロ写真とカラー写真の違いを考える
モノクロとはモノクローム(monochrome)の略で、「1つの色」という意味です。
つまり白地に黒だけで描写する写真のことです。
白黒とは言っても、白と黒の間にグレーがあるので、その階調は十分表現できます。
それに対してカラー写真は、人間が目に見える色に近い描写になるので、当たり前ですが、大幅に表現の幅が広がります。
モノクロ写真のメリット
色がないというのは非現実的なことで、表現の幅も狭まります。
なのに、わざわざモノクロで表現する人がいるのはなぜでしょうか。
ここではモノクロにするメリットを考えてみましょう。
形と明るさを印象付ける
前述のように、モノクロは色の表現が奪われることで、輝度情報(明暗)しか残りません。
すると被写体を表現するのは、その形と明暗だけになります。
これは不便に感じますが、逆に言うと、この部分を強調できるということです。
色情報がない分、被写体の形が注目されるのです。
例えばモノクロ写真で被写体をシルエットとして撮影すると印象的な写真になりますね。
レトロで落ち着きのある雰囲気を出せる
レトロでノスタルジックな雰囲気を出せるのもモノクロ写真の魅力の一つです。
壁に飾っても、シックで落ち着いた雰囲気を演出できます。
また同じ写真でもモノクロ加工にするだけで、雰囲気がガラッと変わります。
自分の撮った写真がなんとなくイメージに合わないと思ったら、モノクロ写真に変換してみるとしっくりくることもあるので試す価値はあるかもしれません。
写真に写り込んだ激しい色を排除できる
カラーで撮影したものの、思いがけず、写真の中に目にうるさい色が映り込んでしまうことがよくあります。
例えば、背景にショッキングピンクの派手な服を着た人が映り込んでしまった場合などですね。
そんな時は、モノクロに加工してしまえば、背景の派手な服に目を奪われることがなくなり、本来表現したい被写体に目が留まるようになります。
白飛びが気にならない
写真の輝度差(明暗差)が大きい場合、どうしても白飛びしてしまうことがあると思います。
カラー写真で白飛びすると、本来色があるはずのものが白くなってしまうので、不自然に感じてしまいます。
ところが、モノクロ写真にすると、そもそも色がない世界なので、白飛びにさほど違和感を感じなくなります。
ファイルサイズが小さくなる
これはおまけですが、デジタルデータの場合、カラー写真に比べてモノクロ写真の方がファイルサイズが小さくなります。
これは色の情報がない分、軽くなるのは当たり前ですね。
そもそもデータを軽くするためにモノクロで撮ることはないですよね。
モノクロ写真のデメリット
逆にモノクロ写真のデメリットはなんでしょうか。
モノクロ写真の弱点も把握しておくことで、気を付けるべきことが見えてくると思います。
被写体が何かわかりにくいことがある
被写体が複雑な形をしていたり、背景がごちゃごちゃしていたりすると、モノクロにしたときに被写体がわかりにくくなることがあります。
カラー写真なら、同じくらいの明度でも色の違いで判別できますが、モノクロにしてしまうと、同じようなグレーになってしまって判別がつかなくなってしまうのです。
なのでモノクロ写真を撮るときは背景と被写体の明度差が大きくなるように心がけるとよいでしょう。
色の印象が残せない
モノクロを選んだ以上、色の表現ができないのは当たり前ですが、色がその写真にとって重要な場合は適さないでしょう。
例えば、紅葉の美しい山を撮っても、モノクロではその美しさが伝わりません。
黄色と赤の違いは濃淡で判別できるかもしれませんが、やはり色がないと味気ないただの山の写真になってしまいます。
風景写真では、明暗でその美しさが表現できる場合を除いてはカラー写真が有利と言えます。
モノクロ写真を選択するポイントは色が「邪魔」か「重要」か
モノクロかカラーかを選ぶ上では、その写真にとって色が邪魔か重要かで考えます。
具体的に言うと、モノクロ写真に向いているのはポートレートです。
瞳や肌、着ている服の色などは、その人の表情や風貌を表現する上では不要になることが多いからです。
逆にカラー写真が適しているのは風景写真でしょう。
風景写真はその情景の美しさを表現するものなので、カラー写真が選ばれることが多くなります。
ただし前述のように、風景の明暗や影の美しさ、シルエットを表現したい場合は、風景写真でもモノクロが選ばれることはありますね。
このように被写体の本質を捉えるモノクロ写真か、被写体をそのまま表現するカラー写真かが使い分けのポイントとなるでしょう。